退職届ですか退職願ですか、書き方が違います

退職は人生ににおける重大事で、多くのドラマの素材になるほどドラマティックな出来事です。
ジャック・ニコルソンが主演した映画、「アバウト・シュミット」では定年退職を迎えたサラリーマンの再生が描かれた佳品でした。渡辺謙が主演した「明日の記憶」では若年性アルツハイマーを患ってやむなく退職するシーンに涙した人も多かったのではないでしょうか。「フラガール」では時代の波にのみこまれる常磐炭鉱の大量解雇が背景にありました。働く場から去るというのは定年、自己都合、会社都合、どのような形であれ、自分や周囲の人を含めたライフスタイルそのもに関わる劇的な大事です。
退職届を提出する可能性は、会社組織に身を置く人なら多かれ少なかれ、つきまとっているものです。終身雇用制が崩れてきている現代のような競争社会においては、本人の希望にかかわらず、定年まで勤務する(できる)人は幸せといえるほど少ないのかもしれません。定年退職の前の退職というのは、一度はその組織に身を置き、活動した人にとっては人生における大きな出来事と言えるでしょう。退職届を提出する事態になっても、願わくば飛ぶ鳥跡を濁さずの気持で、しかし卑屈にならず平常心を保ちたいものです。退職後の将来のことはだれもわかりません。人脈は大切にしておきたいものです。できれば、「近くに来た時には顔を見せてね」と言われるような去り方ができると素晴らしいですね。
そうはいっても相手のあることです。リストラ、その他の理由による会社側の都合による退職勧告もあれば、自分の諸事情、都合による退職の意思決定もあるでしょう。退職届は会社に提出する最後の書類です。退職の理由に応じて退職届の書き方も違います。退職届の書き方一つで、その後の法的扱いも変わるほど大切なものです。
退職届の書き方を頭に入れておくことは、今退職することを考えていない人にも大切なことです。
具体例としてこんな質問を受けた時、もしあなたが当事者だったらどうしますか。
1、今でも働き続けたいのですが、会社都合で辞めざるをえません。退職届の書き方を教えてください。「一身上の都合で」という文例ばかりなので…そもそも会社都合で辞めるのに退職届が必要ですか。
2、先日、会社側から「辞めて欲しい」と言われ、いろいろ話し合った結果退職しようと思います。でも、雇用保険や退職金等、あとで不利益なことを受けるのは嫌です。退職届の書き方では「一身上の都合の為」と書くのが普通のようですが、やっぱり「一身上の都合・・・」と書くのでしょうか?
3、退職届の書き方について、具体的なことですが1行目に「私こと」というのをよく見ます。
この「私こと」が縦書きの場合1行目の下の方に書かれているのは何か理由があるのでしょうか?
4、退職届を書く用紙について、退職願は便箋に縦書きで書かれているのに対して、退職届は白い紙に横書きで書かれている事に気がつきました。退職届は便箋に書いてはいけないのか、また横書きが普通なのですか。
友人からこれらのような相談を受けた場合、きちんとアドバイスできますか。答えは最後に書いておきます。
質問の中に退職届と退職願が出てきていますね。きちんと整理してみましょう。

退職届は退職の理由によって異なる

退職の意味と退職の種類を理解しておきましょう。
退職というのは、就職の際に締結していた労働契約を解除し職を辞することです。
退職には退職理由によって自己都合退職と、解雇の結果としての退職に分けられます。自己都合退職は、労働者個人の諸事情による都合、労働者が自分の意思で労働契約の解除を希望するものです。解雇による退職は、退職勧奨であれ一方的解雇であれ、どちらも事業者側からの労働契約解除によるものです。定年退職は、就職時に取り決めた労働契約期間満了に伴う退職です。
退職届の書き方も退職理由に合わせた書き方が取られます。それぞれの違いを見てみましょう。
自己都合退職は、労働者側からの労働契約解除の申し入れで、その方法は文書でも口頭でも有効とされますが、労働慣習では、文書で申し出ることを「退職届」といいます。労働者側からの申し入れなので、書き方は「退職願」と書くのが一般です。退職届の用紙や書式は会社に既定の様式が用意されていることが多いですが、なければ完全自筆で文書を作成します。
解雇による退職は、天災事変による事業継続困難や労働者の不祥事など労働契約上の解雇理由にあたる場合を除いては、人員整理、事業縮小など使用者側の経営上の都合による解雇なので、退職届の書き方は「退職願」ではありません。「退職届」となります。また解雇に合理的かつ正当な理由がない場合は、労働基準法上解雇権の濫用(不当解雇)として無効になることも知識として覚えておきましょう。ちなみに使用者が労働者を解雇しようとする場合には、少なくとも30日前の予告、30日分以上の平均賃金の支払 のいずれか(または両方)をしなければいけません。
労働者側からの退職願は、民法上は、解除を申し出た日の14日後に解除されることになっています。ただし、双方が合意すれば、退職日を14日後以外に設定することもできます。この場合は、労働契約解除日の合意解除・合意解約という契約を行ったことになります。
自己都合による退職願の書き方サンプルのひな型例です。
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              退職願
                        私儀(○○○○)
このたび一身上の都合により、来る平成○○年○月○日をもって
退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
平成○○年○月○日
                  ○○部○○課
                  ○○ ○○ 印
株式会社○○
代表取締役社長 ○○ ○○ 殿
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退職届、退職願の区別

先ほどの質問に対する答えです。
1、会社都合で辞めざるをえず今でも働き続けたいと思っているのですから、「退職願」ではありません。不当解雇に当たる可能性がある場合や、退職理由が承知できないのなら納得できるまでは退職届は提出しません。会社から解雇通知が出るはずです。
2、会社側都合で辞める場合でいろいろ話し合った結果、納得して退職しようという場合も会社都合ですから「退職願」ではありません。「退職届」になるか「解雇通知」になるかはケースによりますから双方の意思が重要になります。「退職届」を提出するにしても離職票の退職事由は会社都合ですから、よく確認する必要があります。失業保険給付などの扱いが変わりますので。
3、仕儀、私こと、と縦書きの右下(横書きの右昼ホ通知でも同様ですね。
4、退職届の書き方は、会社所定の様式がなければ、横でも縦でも構いません。用紙も便箋でも結構ですが、書き方の原則としては、用紙は、白の無地の便箋を使い、黒か青のサインペン等で、楷書で記入します。「一身上の都合」と書くのは自己都合の退職の場合の文書上の表現形式です。
自筆で書き、書面の宛名を会社の最高責任者、つまり社長宛にして、直属の上司に直接手渡すのが原則になっています。郵送や上司のいない机の上に置いたりしてはいけません。封筒は無地で、表に「退職願」、裏面に自分の所属部課名と氏名を縦に記入します。日付は退職日で、上司らと相談していればその日付を入れ、退職希望日を書くのではないことに注意しましょう。退職届・退職願を書いた日を書くわけでもありません。
自己都合退職の場合は、一般に文書を提出する前に上司と口頭で話し合うのがマナーです。突然解雇通知を受けたら困惑するのと同じように、突然退職願を提出されるのもまた困るものですから。
願わくば、退職は「退職願」で、ステップアップした次の職場が決まっているというのが良いですね。あとは形式的なことで難しいことはありません。それだけに誠意を持って退職することが大切です。退職願を出しても退職日までは仕事に集中して退職するその瞬間まで勤め上げてほしいと思います。円満退職はその後の歩みに必ず良い影響をもたらすはずです。

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